

毎日をもっと快適に。痛みなく動ける体を目指す「可動性」と「柔軟性」の違い
固くなった輪ゴムと、滑らかに動く蝶番。ご自身の体は、どちらのタイプに近いでしょうか?
高い棚の物を取ろうと腕を伸ばした時、あるいは床に落とした物を拾おうと屈んだ時、体や関節がギシギシと音を立てるような、スムーズに動かない感覚を覚えたことはありませんか?多くの方が「体が硬いから」「柔軟性がないから」と感じるかもしれません。もちろん、それが正しい場合もあります。しかし、私たちが日々経験する快適な体の動きの秘密は、単に体がよく伸びるかどうかにかかっているわけではないのです。
長く使われて固くなった輪ゴムと、手入れが行き届き滑らかに動くドアの蝶番(ちょうつがい)を思い浮かべてみてください。輪ゴムは力を加えて引っ張れば伸びますが、その力がなくなれば元の状態に戻るか、あるいは切れてしまうこともあります。一方、蝶番は自身の力で決まった範囲を滑らかに、かつ安定的に動きます。私たちの体の動きも、これとよく似ています。今回は、フローマンゴーが「柔軟性」と似ているようで少し異なる「可動性」という概念について、お話ししたいと思います。
柔軟性(Flexibility)とは、受動的な動きの範囲
私たちはよく、開脚して足を大きく広げたり、深く前屈する姿を見て「体が柔らかい」「柔軟性がある」と表現します。
柔軟性(Flexibility)とは、筋肉や腱、関節包などの軟部組織が、外部からの力によって受動的に伸びる能力を指します。ヨガのクラスでインストラクターのサポートを受けながらポーズを深めたり、パートナーとストレッチをする時を想像すると分かりやすいでしょう。これは、筋肉本来の長さに近い状態とも言えます。柔軟性を高めることは、筋肉の緊張を和らげ、体を動かせる範囲を広げるための大切な第一歩となるでしょう。
可動性(Mobility)とは、能動的な動きの力
しかし、誰の助けも借りずに、ご自身の力だけで足を望む高さまで上げたり、肩を回して背中を掻くような動作は、また別の話です。
これこそが可動性(Mobility)の領域なのです。可動性とは、関節が自身の力とコントロール能力によって動かせる、能動的な範囲を意味します。単に筋肉が伸びるだけでなく、関節自体の健康、その周囲の筋肉の強さ、そしてこれら全てを調整する神経系の協調が不可欠です。まるで手入れの行き届いた蝶番のように、私たちの体の関節が痛みや不安定さを感じることなく、制御された状態で動く能力と言えるでしょう。
なぜ柔軟性よりも可動性が重要なのでしょうか?
日常生活での体の動きは、誰かに体を伸ばしてもらうストレッチとは異なります。
椅子から立ち上がる、階段を上る、車のハンドルを回す、といったあらゆる瞬間に、私たちの体は自らの力で動きを生み出しています。これこそが、可動性の連続なのです。柔軟性だけが高く、可動性が不足していると、まるでグラグラする蝶番のように関節が不安定になり、かえって怪我のリスクが高まる可能性があります。ご自身でコントロールできない範囲まで体が動いてしまうためです。一方で、良好な可動性は関節を安定的に保護し、力強く効率的な動きを生み出します。これは、痛みなく快適な毎日を送るための強固な基盤となるでしょう。
ご自身の可動性を「呼び覚ます」動き
大がかりな運動でなくても大丈夫です。朝目覚めた時や、デスクワークの合間に少し時間を取って、関節を優しく回すことから始めてみましょう。「Controlled Articular Rotations(コントロールされた関節回旋運動、通称CARs)」は、関節の可動性を確認し、向上させるのに非常に良い方法です。早く、強く行う必要はありません。むしろ、ゆっくりと、痛みを感じない範囲で、まるで関節の全ての可動域を探求するかのように動かしてみてください。
- 首の動き(頸椎CARs): 椅子に正しい姿勢で座り、顎(あご)を鎖骨の方へ軽く引きます。顎で大きな円を描くようにイメージしながら、ゆっくりと首を優しく回します。もし動きにくい場所や不快感がある場合は、さらにゆっくりと、注意深く動かしてみてください。
- 肩の動き(肩関節CARs): 片腕を前に伸ばし、手のひらを内側に向けます。腕全体を非常にゆっくりと、耳の横まで持ち上げます。最も高い位置で手のひらを外側に返し、そのまま背中の後ろを通って大きな円を描くように下ろしていきます。肩関節自体の動きに意識を集中しましょう。
- 股関節の動き(股関節CARs): 壁や椅子に手をついて立ち、片足の膝を胸の方へ持ち上げます。その状態から、膝で外側に向かって最も大きな円を描くように、ゆっくりと回します。骨盤はできるだけ動かないように固定するのがポイントです。
ヨガウェアとアスレジャーは、可動性を高める心強い味方
動きに集中するためには、体を心地よく包み込むウェアが役立ちます。
可動性運動を行う際は、関節の可動域全体を使うため、ウェアが体の動きを妨げてはいけません。伸縮性に優れながらも体を優しくサポートしてくれるヨガウェアやアスレジャーウェアは、最適な選択肢となるでしょう。動きを邪魔しないフィット感のトップスやレギンスは、肩や股関節を自由に動かす手助けをしてくれます。さらに、運動後も普段着として違和感のない快適なデザインであれば、忙しい日々の中でも、ちょっとした合間にご自身の体をケアする時間を取りやすくなるはずです。長く愛用できる、肌触りの良い生地で作られたウェアと一緒なら、その気持ちよさは一層増すことでしょう。
ご自身と向き合う時間、ご自身のための動きを。「Find Your Flow」