テキスタイルラボ  ·  2026 · 夏NO. 71 / 72
ヨガウェアの柄、どうやって生地に宿るの? 美しいデザインを支える3つの技術
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ヨガウェアの柄、どうやって生地に宿るの? 美しいデザインを支える3つの技術

スクリーン、転写、デジタル。生地に表情を与えるテキスタイルプリントの3つの技法

マンゴー編集部·2026-09-07·約8分で読めます

お気に入りの柄に惹かれて選んだヨガウェア、きっと一枚はお持ちのことでしょう。その柄がどのように生地に施されているのか、じっくり考えたことはあまりないかもしれません。テキスタイルプリントと呼ばれるこの工程は、実は古くから伝わる技術と最先端の技術が共存する奥深い世界です。フロウマンゴー テキスタイル研究所の最初のテーマとして、今回は生地に柄を施す代表的な3つの方法を紐解いていきましょう。

柄を施す、その意味

染めとプリントは似ているようで、実は異なります。染めが生地全体を一色に染め上げるのに対し、プリントは特定の場所にだけ色を乗せて柄を作り出すものです。そのため、テキスタイルプリントは「限定された場所に行う染色」と表現されることもあります。色が繊維にどのように定着するかによって、柄の鮮明さ、生地の風合い、さらには洗濯後の状態まで大きく変わるのです。それぞれの方法には特性があり、洋服の用途に最適なプリント技法が選ばれています。

スクリーン印刷(捺染):版で色を重ねる、職人の技

スクリーン印刷は、版画をイメージするとわかりやすいでしょう。柄の形に穴が開いたスクリーン(版)を生地の上に置き、その上から染料を押し付けて柄をプリントします。色が増えるごとに版もその数だけ必要になるため、手間はかかりますが、色が濃く、力強く発色するのが特長です。同じ柄を大量に生産する際には単価が下がるため、現在でもTシャツや量産される衣料品で広く用いられています。Tシャツの胸元にある、少し盛り上がったプリントに指先で触れた経験があれば、その手触りがスクリーン印刷の特徴と近いものです。

昇華転写プリント:熱で染料を繊維に「宿す」

転写プリントは、まず紙に柄を印刷し、それを熱と圧力で生地に移す方法です。中でもヨガウェアと特に縁が深いのが昇華転写プリント。熱を加えることで染料が気体のように変化し、繊維の奥深くへと浸透して定着します。表面に色を乗せるのではなく、繊維そのものに染み込むため、プリント部分がゴワつくことがなく、生地本来のしなやかな風合いがそのまま残ります。身体を深く曲げたりねじったりするヨガのポーズでも、柄がひび割れたり剥がれたりする心配が少ないのは、この技術のおかげなのです。ただし、昇華転写はポリエステルなどの熱に反応する合成繊維との相性が良く、綿のような天然繊維には適していません。機能性素材のヨガウェアに、鮮やかで美しい柄が多いのは、こうした技術的な背景があるからなのです。

デジタルプリント:プリンターが生地に描く、無限の表現

デジタルテキスタイルプリントは、ご家庭のインクジェットプリンターがそのまま大きくなって、生地に直接印刷するようなイメージに近いでしょう。版を作る必要がないため、たった一枚からでもプリントが可能で、一枚ごとに異なるデザインを施すこともできます。写真のような繊細なグラデーションや、数十色を組み合わせた複雑な柄も一度に表現できるのが魅力です。世界のテキスタイル産業では、デジタル方式は「必要なものを、必要なだけ、多様に」作るという、少量多品種生産の流れを後押しし、その存在感を増しています。デザイナーが朝に描いたデザインが、午後にはもう生地になっている、そんなスピード感は、版を彫っていた時代には想像もできなかった大きな変化と言えるでしょう。

あなたのヨガウェアは、どのプリント技法で彩られている?

この3つの技法を知れば、きっとあなたのクローゼットを見る目が少し変わるはずです。

  • 表面が盛り上がっているプリント — スクリーン印刷に近いでしょう。裏返して洗濯し、アイロンがけを避けることで、柄を長持ちさせることができます。
  • 生地の風合いはそのままに、柄が鮮やかな機能性素材 — 昇華転写プリントの可能性が高いです。柄が繊維の奥に定着しているため剥がれる心配は少ないですが、過度な高温は避けるのが賢明です。
  • 写真のように繊細な色彩表現 — デジタルプリントに近いでしょう。洗濯表示に従い、ぬるま湯で優しくお手入れしてください。

どの方法であっても、柄は生地と一体になってこそ輝きます。身体を深く曲げるヨガのポーズでも、柄が自然に身体の動きに寄り添ってくれるウェアなら、その製造過程には、生地と柄の調和に対する作り手の深い想いが込められていることでしょう。

フロウマンゴー テキスタイル研究所からの、次のお話

フロウマンゴー テキスタイル研究所では、これからも生地と繊維、そしてテキスタイルデザインの奥深い世界を、一つずつ丁寧に紐解いていきます。専門資料や国際機関のリサーチを基にしつつも、難しい専門用語は避け、日々の暮らしに寄り添う言葉でお届けします。次回は、ヨガウェアによく用いられる再生繊維について詳しく見ていきましょう。

参考文献

  • Wikipedia, Textile printing — テキスタイルプリントの定義と歴史、スクリーン印刷(捺染)の概要
  • Wikipedia, Digital textile printing — デジタルテキスタイルプリントの原理と産業動向
  • Wikipedia, Dye-sublimation printing — 昇華転写プリントの原理(熱による染料昇華とポリエステルへの定着)
  • Textile Exchange, Materials Market Report — 世界の繊維素材市場動向レポート
  • AATCC(米国繊維化学染料者協会), aatcc.org — テキスタイル染色・プリント試験の標準を扱う国際機関

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